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    民事訴訟手続のIT化

    2020-11-17 | 事務対応について >

    民事訴訟手続のIT化

    我が国では裁判手続のIT化をフェーズ1からフェーズ3までの3段階を経て実現する予定となっており、フェーズ1はその1段階目です。フェーズ1では、法改正を要することなく現行法の下でIT機器の整備や試行等の環境整備により実現可能となるものについて、速やかに実現を図っていきます。この例として、電話会議に加えてTeamsを活用したウェブ会議等のITツールを積極的に利用したより効果的・効率的な争点整理の試行・運用を開始することが挙げられており、現行法下で実施されるものとして民事訴訟法の「弁論準備手続」または「書面による準備手続」として行われます。

    本年2月から、フェーズ1として、東京地方裁判所など一部の裁判所で取り扱われる民事訴訟事件の争点整理手続として、MicrosoftTeamsを活用してのウェブ会議が始まりました。

    神戸地方裁判所においても、担当部によって活用されています。当事務所が担当している民事事件においても、担当弁護士が事務所にいながら、MicrosoftTeamsで裁判所と相手方代理人と当方をウェブ会議で繋ぎ、準備手続を行っています。

    今後、書面の提出や期日調整、事件管理などもすべてオンライン化されることが予定されており、新型ウィルスの感染拡大予防の観点からも、急速に普及していくと思われます。

    当事務所も、情報や知識などを常にアップデートし、対応しています。

    なお、当事務所では、訴訟手続以外にも、依頼者との打ち合わせにMicrosoftTeamsやZoom等によるウェブ会議を導入しておりますので、ご希望の方は担当弁護士までお尋ねください。

    【参考情報】

    全国の地方裁判所本庁でウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の運用を開始しました。

    https://www.courts.go.jp/about/topics/webmeeting_2020_1214/index.html

    Teamsを活用した争点整理を行う裁判所の情報は上記サイトを参照ください。

     

    (事務スタッフ 山村)

    デジタルプラットフォーム企業の消費者に対する義務

    2020-11-02 | 判例・法令等 >

    デジタルプラットフォーム企業の消費者に対する義務

    アマゾンのマーケットプレイス(出品者がアマゾンの倉庫に製品を保管し、顧客に直接製品を出荷することができるというデジタルプラットフォーム)で購入した中国製のモバイルバッテリーが出火して、自宅が火事になったとして、アマゾン・ジャパンに対して損害賠償を求める訴訟が東京地裁に提起されたとの報道がありました。

    被害者は、商品の製造者が中国企業であり、現地での訴訟を提起するとなると相当な時間、コストがかかることから、当該中国企業ではなく、アマゾン・ジャパンを提訴するにいたったようですが、アマゾンはあくまでマーケットプレイスのサービスを提供しただけですので、製品の製造者には該当せず、製造物責任法に基づく責任を負う可能性は低いものと考えられるため、被害者は、アマゾン側が、商品に瑕疵がないか、商品に問題が生じた場合にユーザーに適切な対応をとる事業者かについて、合理的な審査基準を設けて審査すべき義務や、保険・補償制度を構築する義務の違反を損害賠償請求の根拠としているようで、今後は、このような法的義務の有無が争点になるものと予想されます。

    近頃は、本件のようにデジタルマーケットプレイスで購入した商品の瑕疵を原因とする事故が増加しているようで、これを受けて、消費者庁から、アマゾンなど大手ネット通販運営者に対して、出店する事業者を特定するための対策を講じることを求めるなど、法整備の動きがあるとの報道も耳にするところですが、現実問題として、多数の出品業者や、多量に出品される商品すべてについて、アマゾンが独自に審査基準を設け、これを審査することは可能なのか、デジタルマーケットプレイスとしての利便性を損なう結果に繋がるのではないかとの見方もあり得るところであり、見解が分かれる点ではないかと思います。

    この点、米国では、ペンシルベニア州の男性がマーケットプレイスで購入した商品が原因のケガについてアマゾンを提訴したのに対し、連邦巡回区控訴裁判所が「アマゾンはマーケットプレイスで第三者が取り扱った商品の責任を負う必要がある。」との判決を下したといった報道や、カリフォルニア州の下級裁判所が、「アマゾンはあくまでマーケットプレイスのサービスを提供しただけで、製品の製造・流通・販売を行ったわけではないため、同社に責任はない。」とする判決を言い渡したのに対し、控訴審では、「アマゾンがマーケットプレイスの製品に対して果たす役割が『販売業者』であれ、ただの『販売促進者』であれ、アマゾンのサイトを通じて販売された製品が不良品であったことが判明した場合、アマゾンはその責任を負わなければならない。」として、アマゾンの責任を認め、下級審の決定を覆したとの報道(いずれも、販売業者が不明であったり、ゴーストカンパニーである等、販売業者に対して提訴することが困難であったことから、アマゾンを提訴するに至った事案のようです。)も耳にするところですが、日本においては、どのような法的根拠、判断が示されるのか、今後の動向が注目されるところです。

    弁護士 大本健太

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