1 2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法において、全ての事業主にカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務が課されることになりました。同改正法の施行は公布から1年6ヵ月以内の政令で定める日とされており、施行日までに対応しなければならないことが、中小企業も含めた全企業の法的義務となっています。
措置義務違反には、パワハラ等に関する措置義務同様、厚生労働大臣による助言、指導又は勧告、さらには勧告に従わなかった場合の企業名公表というペナルティがあり、何らの措置を行っていない企業においては、早急に対応を進める必要があることから、パワハラ等に関する措置義務との整合性含め、制度設計を行う必要があるかと思います。
2 今回の改正内容からすると、カスタマーハラスメントの定義として
① 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係人が行う
② 社会通念上許容される範囲を超えた言動により
③ 労働者の就業環境を害すること
の全てを満たす場合がカスハラに該当するという理解になるものと考えられます。
3 措置義務の内容については、
① 労働者の就業環境がカスハラによって害されることのないよう、相談に応じ、適切に対応
するために必要な体制の整備
② 労働者の就業環境を害する当該カスハラへの対応の実効性を確保するために必要なその抑
止のための措置
③その他の雇用管理上必要な措置
といった措置が求められています。
また、厚生労働省から、指針(ガイドライン)が公表される予定とされており(2025年10月14日現在では未公表)、厚生労働省のパンフレットからすると、
・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
・相談体制の整備・周知
・発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置
に関する具体的な内容が示されるものと考えられますので、ガイドライン公表後は、同ガイドラインも参照して各企業の制度設計を行うか、既存の制度を見直すのがベターと考えられます。
4 厚生労働省からは、2020年時点で、パワハラ等に関する措置義務のガイドラインのなかでカスハラ対応について事業者が講じるべき望ましい取組が挙げられていることも、参考になると思われますし、2022年2月時点で、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルが公表されていますので、こちらも参考になるかと思われます。
なお、自治体の先進的取組としては、2024年10月、東京都が全国で初めてカスタマーハラスメント防止条例を制定したほか、2025年10月、三重県が罰則付きのカスタマーハラスメント防止条例を制定する方針を固めたことが報道される等、社会の関心は高まりつつあるといえますし、各企業の所在地に応じて条例制定の有無・内容も確認し、これらを踏まえたうえで制度設計を考える必要があります。
5 上記の対応ができていないが、措置義務を具体的にどのように実行していったらいいかわからない、外部の相談窓口、あるいは外部の調査窓口を設置したい、といった場合には、一度ご相談下さい。