2022-05-31 | 判例・法令等 >
テレビ番組に出演していたプロレスラーの女性がSNS上での誹謗中傷を受け自ら命を絶ってしまった事件や、池袋暴走事故の遺族の方に対するSNS上の誹謗中傷の事件は記憶に新しいことかと思います。こういった事件を受け、2021年4月21日、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(=プロバイダ責任制限法)の一部を改正する法律」が成立しました。
施行日は、公布の日(同年4月28日)から1年6月を超えない範囲で定められますので、遅くとも2022年10月頃には新法が施行されることとなります。
発信者情報を開示するには、今まではコンテンツプロバイダに対する仮処分手続の後、アクセスプロバイダに対する訴訟手続という二度の裁判手続が必要でしたが、今回の改正では、「発信者情報開示命令」という制度を作り、一度の非訟手続で発信者情報の開示ができるようになりました。被害者は、コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示命令申立事件とアクセスプロバイダに対する発信者情報開示命令申立事件を同じ地方裁判所に同時に申立て、両事件は併合され審理されることとなります。
開示命令申立事件の管轄は、相手方(現時点ではコンテンツプロバイダを指すと考えられています)の主たる事業所または営業所の所在を管轄する裁判所とされていますが、東日本であれば東京地方裁判所、西日本であれば大阪地方裁判所へも申立てが可能となりました。
新法の「発信者情報開示命令」制度を利用すれば、現在よりも短い期間と少ない費用で発信者情報が開示されることが予想され、旧法での仮処分手続に必要であった担保金も不要となるなど、被害者にとっては負担が軽減されると思われます。
なお、削除請求については、今回の改正では組み込まれなかったため、従来通り仮処分等の手続を行う必要があります。
匿名をいいことに、ネット上に好き勝手に誹謗中傷を書き込み、被害者を苦しめる事件が後を絶ちません。新法が施行され、そういった被害者が少なくなることを期待するとともに、当事務所としても被害者を助ける役割を担っていきたいと思います。
改正プロバイダ責任制限法引用元:総務省ホームページ
(事務スタッフ 山村)