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個人再生手続申立事件について

2022-03-22 | 弁護士の業務内容 >事務対応について >

個人再生手続申立事件について

2021年2月19日及び8月6日のブログにて破産管財事件、同時廃止手続事件についてお話させていただきましたので、今回は個人再生手続申立事件についてお話させていただきます。
 
1.個人再生手続について
⑴個人再生手続とは
債務超過を解消するためのひとつの選択肢です。ご本人名義の自宅がある方が破産手続を選択すると、原則的には自宅を売却せざるを得ないので、自宅を残したい方でかつ継続的に安定した収入があり、弁済計画を立てることができる方は、個人再生手続を選択されるケースが多いです。
住宅ローン以外の全債権者の債務を減額(最低弁済額は法律で定められています)し、減額後の債務を原則3年間(特別な事情がある場合は最長5年間)で分割して返済する再生計画を立て、債権者の意見を聞いたうえで裁判所がその再生計画を認めれば、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務(養育費、税金などの一部の債務を除く)などが免除される手続です。

個人再生手続には次の2種類があります。
①小規模個人再生手続
 主に、個人商店主や小規模の事業を営んでいる人等を対象とした手続であり、以下の条件が必要となります。
 ⅰ.借金などの総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
 ⅱ.将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
②給与所得者等再生手続
 主に、サラーリーマンを対象とした手続です。
 利用するためには、①のⅰ、ⅱの条件に加えて次の条件が必要です。
 ⅲ.収入が給料などで、その金額が安定していること
⑵住宅ローン特則について
 借金などの債務の他に住宅ローン債務もある方については、小規模個人再生 手続または給与所得者等再生手続の申立をする際に、住宅ローンについての特則を希望する旨を追記することができます。ただし、この住宅ローンについての返済総額は、他の債務などのように減額することはできません。また、この特則を利用する場合には、事前に銀行等の住宅ローン債権者と打合せが必要です。これにより、住宅ローンの返済については、期限の利益を喪失することなく返済を継続でき、所有している不動産の競売を回避することができます。

2.手続きの流れ
⑴受任まで(ご相談)
 個人再生手続を希望される経緯、財産状況、債権者、債権額をお伺いします。場合によっては、個人再生手続を選択できないこともありますので、どの手続がよいのか、弁護士がご本人のご希望や現状のお話を伺わせていただいたうえで手続の提案及び弁護士費用のお見積書を出させていただきます。
 方針が決まり、弁護士業務委任契約を締結できれば、受任させていただきます。
⑵受任通知の発送
 受任させていただきましたら、各債権者に対し受任通知を発送いたします。受任通知には、債権額を当事務所宛に返送するように記載しています(債権調査)。この受任通知が債権者に届きましたら、通常、連絡はすべて当事務所宛にくることになり、貸金業者については、貸金業法21条1項9号により直接の要求が禁止されます。
⑶財産調査
 不動産、預金、保険契約、自動車等お持ちの財産を開示していただきます。
 預金につきましては、現在利用していない預金も含まれます。また、配偶者や親族など、生活を共にされている方の預金につきましても開示が必要となることがあります。
 保険契約につきましては、自動車やバイク等の自賠責保険、任意保険も含まれますし、掛け捨てと思われる生命保険も開示ください。
 自動車等につきましては、車検証の写しをお預りいたします。
 また、交通事故の示談金、既に発生している債権、財産権についても、すべてご開示ください。
⑷債権調査
 債権者宛の債権調査の返信により債権額を確定させます。
⑸家計収支表の作成及び弁済金の積み立て
 依頼者の方には、申立に必要な書類の取付等を行っていただくことと並行して、月々の家計収支表を作成いただきます。また、新たに預金口座を開設いただく等して弁済専用の口座に債権者へ弁済する弁済金の任意積立を毎月行っていただきます。どちらも、再生計画の履行可能性を裁判所が判断する材料となりますので、毎月必ず行っていただく必要があり、取り崩したりすることのないようにお願いします。任意積立の月額については、裁判所から指示がある場合がありますが、詳しくは担当弁護士にお尋ねください。
⑹個人再生手続申立
 財産調査、債権額の確定が終われば申立書類一式を当事務所で作成し、裁判所に個人再生手続申立を行います。依頼者の方には、引き続き毎月の家計収支表の作成と、任意積立金の積み立てを継続していただきます。
⑺開始決定
 裁判所は、申立書類一式を審査し、問題がなければ、個人再生手続の開始決定を行います。
 裁判所から債権者に対し開始決定が送付されます。債権額の異議の申述期間が設けられていますので、この申述期間内に異議等ある債権者は裁判所に対して申述します。
⑻再生計画案提出
 上記⑺で債権者から異議の申述がなされなければ、当事務所において再生計画案及び弁済計画表を作成し、裁判所宛提出します。
⑼債権者への議決もしくは意見聴取
 上記⑻で提出した再生計画案が裁判所により認められると、書面による決議に付する決定がなされ、債権者に再生計画案とともに送付されます。債権者の議決(小規模個人再生手続の場合)もしくは債権者への意見聴取(給与所得者等再生手続の場合)の期間が定められます。
⑽再生計画認可決定
 上記⑼の再生計画案につき、債権者から同意しない旨の回答がなければ、再生計画案が可決され、さらに、裁判所により認可・不認可の決定が行われます。認可決定がなされた場合は、決定からおよそ2週間で官報に掲載され、官報掲載後2週間で認可決定が確定し、確定日の属する月の翌月から弁済計画表に基づいた弁済を依頼者自ら開始していただきます。
⑾弁済
 弁済計画表に基づいた弁済を3年間(最長5年間)、毎月依頼者の方自ら行っていただく必要があります。弁済計画表に基づき3年間(最長5年間)の弁済が完了したときに、はじめて債務の残額が免除されます。

 個人再生手続は、依頼者の方が自ら主体的、また長期的に取り組んでいただかなければならない手続です。できなかった場合、手続自体が廃止となる可能性があります。いろいろと分からないことやご不安がおありだと思うので、まずは弁護士にご相談いただければと思います。
 
(事務スタッフ 山村)

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