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安全配慮義務

介護者により提供される介護の過程において、事故が生じた場合における介護者の責任の種類としては、大別すると、法的義務とは別の道義的責任、法的義務のなかでは刑事責任、民事責任と行政上の責任に分けることができますが、ここでは、民事上の責任のなかで、介護事故で最も問題となる安全配慮義務について説明したいと思います。

介護事業者にとっての安全配慮義務とは、介護事業者が、介護サービスの提供にあたって、被介護者の生命、身体、財産といった権利、利益を侵害することなく安全にサービスを提供する義務をいいます。かかる安全配慮義務に反していたと認められた場合、介護事業者は、被介護者に生じた損害に対して、民事上の賠償を行う義務が生じます。

問題は、どの程度の注意義務が課されるかということですが、医療過誤における注意義務に関する裁判例が参考となるところで、最高裁は、「注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」と判示しており、介護の現場においても、介護水準、介護事業者として普通は講じておくべきリスクマネジメント、対策、注意を怠っていたといえるか否かだと思われます。

とはいえ、現実的には、被介護者の状態や介護事故の原因は千差万別ですし、裁判例上、介護水準の定義や枠組みが確立しているとまでは言い難いところで、安全配慮義務違反の有無は、実際のケースごとに個別に検討、評価していかざるを得ないところです。

安全配慮義務違反を問われないため重要なのは、リスクマネジメントで、まずはリスクの把握、確認のため具体的な事故事例やヒヤリハット事例、各職員が気づいた情報や苦情を情報収集し、共有することから始まります。そのうえでリスクを分析し、人、環境、管理、技術といったどのレベルの問題点なのかを整理し、リスクの大きさを分類したうえで対策を練ることになります。対策としては、リスクとなる要因そのものを取り除くこと、事故発生の確率を減らすこと、事故が生じたとしても損害の程度を軽減するための対策を講じること、リスクの現実化に備えて保険をかけること等、様々です。

そして、これらの対応は、一度行えば終わりではなく、より効果的な手段がないか、ほかにも隠れていた問題がないかなど、検証を継続することが重要であり、リスクマネジメントには継続性と日々の地道な努力が必要となるものです。

そのため、安全配慮義務違反を問われないためには、リスクマネジメントの仕組みを作るだけでは不十分であり、継続的な努力とチェックを続けることが重要となります。

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