介護事業者として、事故発生を予防することが重要であることは言うまでもありません。
しかし、万一の事故に対して、賠償金の資金を手当てすべく、賠償責任保険に加入しておくことも事業継続のためのリスクヘッジとして重要です。
但し、賠償責任保険は、あくまで民事上の損害賠償責任が生じた場合、保険金でこれを補填するものであり、行政責任や刑事責任をカバーするものではありませんし、同義的責任、風評の問題がなくなるわけではありませんので、保険に加入していたとしても、他の事故対策、再発予防策を講じ続けていくことが重要であることに変わりはありません。
また、賠償責任保険においては、保険金支払事由や免責条項等の契約条件を約款として定めており、保険を使用する際には、これらの約款の確認も必要となってきます。
なお、一般の自動車保険や個人賠償責任保険の一部では、示談代行といって、保険会社が被保険者に代わって被害者との示談を代行してくれることが多いですが、あくまで弁護士法72条の例外として一定の要件の下で認められているものであり、施設賠償責任保険等のような介護事故における賠償責任保険については、通常、示談代行サービスは付帯されていないため、例え保険に加入していたとしても、事業者自身で示談交渉を行い、最終的な賠償金額については加入している保険会社と相談し、保険会社の同意をとりつけながら進める必要があります。
特に、賠償義務がそもそも生じるのか疑義があるケースにおいては、慎重な対応が必要ですし、保険会社の認識、損害認定と齟齬があった場合に、被害者だけでなく、保険会社との間においてトラブルとなることもありますので、注意が必要です。
当事務所は、損害保険会社の顧問弁護士として、介護事故についてもこれまで対応してきましたので、このような場合、保険約款の規定、構造も理解したうえで、スムーズに保険会社と連携をとりながら介護事故に対応させていただくことが可能です。