法人のお客様
HOME  >  法人のお客様  >  損害賠償  >  債務不履行(民法改正)

債務不履行(民法改正)

1 履行遅滞、受領遅滞等
2020年4月施行の民法改正により、債務不履行及びこれに基づく
損害賠償請求に関する規定に変更がありました。
まず、履行遅滞については、確定期限がある債務について定めた民法
412条第1項、期限の定めのない債務について定めた同法412条
第3項については変更がありませんが、不確定期限のある債務につい
て定めた同法412条2項については、条文の文言が変更されました。
具体的には、民法改正以前は、不確定期限のある債務については、
条文上「その期限の到来したことを知った時」に遅滞に陥る旨定めら
れていたところ、実務上、期限の定めのない債務との均衡から、期限
の到来をしたことを知った時だけではなく、期限到来後に履行の請求
を受けた場合にも遅滞に陥ると解釈、運用されてきたものを明文化す
るため、民法改正により、「期限の到来した後に履行の請求を受けた
時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い方」と文言
が変更されました(改正後民法412条第2項)。
また、履行遅滞と関連して、受領遅滞についての変更点をみてみると、
保管義務の軽減、増加費用の債権者負担、対価危険の債権者への移転
等、実務上乃至判例解釈上確立されていた受領遅滞の効果が、条文上
も明確化されることになりました(同法413条及び同法413条の
2第2項参照)。
なお、債務者が任意に債務を履行しない場合の履行の強制について定
めた民法414条については、条文の建付けに変更はあるものの、実
質的な内容に特段の変更はないものと考えられます。

2 債務不履行の効果
(1)損害賠償請求の要件
民法改正以前は、損害賠償責任は、債務不履行に対するサンクションと
位置付けられており、過失責任の原則から、債務者側に故意又は過失が
なければ損害賠償責任を負わないものと定められていました。
しかし、民法改正後は、債務不履行により債権者に生じた損害を債務者
に帰責することの根拠を過失責任の原則ではなく、契約の拘束力に求め
ることとし、債務者が契約によって債務を負担した以上、債務者は債務
の内容の実現を引き受けているのだから、引き受けた債務を実現しなか
ったことを持って債務不履行責任を負い、ただ、契約の内容に照らし、
当事者が想定できなかったような事情、あるいは契約の拘束力として正
当化できない事情によって債務不履行責任が生じた場合等、「その債務
の不履行が契約その他の債務の発生原因及び社会通念上の取引理念に照
らして債務者の責に帰することが出来ない事由によるものであるときは」、
債務者に対して免責を認めるとの内容に変更されました(改正後民法4
15条第1項)。
また、同条第2項により、履行に代わる損害賠償(填補賠償)が可能な
場合が明文化されました。
具体的には、債務の履行が不能であるとき、債務者がその債務の履行を
拒絶する意思を明確に表示したとき、債務が契約によって生じたもので
ある場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約
の解除権が発生した時に、履行に代わる損害賠償請求ができるものとさ
れています(同法第415条第2項)。
なお、民法改正以前は、契約成立時の履行不能(原始的不能)の場合に
は契約自体が成立しないと考えられていましたが、改正後は、原始的不
能の場合にも履行に代わる損害賠償が可能とされていることに注意が必
要です(改正後民法412条の2第2項)
(2)損害賠償請求の範囲
損害賠償請求の範囲に関し、いわゆる特別損害について、改正以前は「特
別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又
は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することがで
きる」とされていましたが、改正後は、「当事者がその事情を予見すべき
であったとき」と変更されました(改正後民法416条第2項)。
かかる変更は、現在の判例、実務を明文化したものと考えられますが、
「予見することができた」という文言が「予見すべきであった」と改めら
れたことにより、予見可能性の判断が事実的なものではなく規範的なもの
であることが明確化されたといえ、例えば契約締結後に特別の事情の存在
を告げれば、その特別な事情によって生じた損害が全て賠償の範囲に含ま
れるというものではなく、契約締結当時に、債務者が予見すべきであった
と規範的に評価される事情によって通常生ずべき損害のみが賠償の範囲に
含まれると解釈することが可能となるものと考えられます。
(3)追完請求
民法改正により、売買契約について追完請求権に関する規定が定められて
いるところ(改正後民法562条)、かかる規定は、契約目的物に不適合
があった場合に、債権者を救済する手段として定められたもので、売買の
有償性に着目したものではないこと等から、かかる規定の枠組みは、追完
請求権一般に関しても等しく妥当するものと考えられるため、債務不履行
の際の追完請求についても、かかる規定に従うこととなるものと考えられ
ます。

損害賠償に関連する情報

ページトップへ