保険契約は、契約者又は被保険者が有しているリスク(危険)を保険者が引き受け、その対価として契約者は保険料を支払い、保険事故が発生した場合には、保険者が保険給付を行う契約であるところ、保険者が引受けの可否を判断するとともに保険料の算定をするための重要な情報は、すべて契約者又は被保険者が保有しています。
そのため、保険法は、契約者又は被保険者になる者が、契約の締結に際して、危険に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたものについて、事実の告知をしなければならないと定め、契約者又は被保険者が、故意又は重大な過失により、事実を告知せず(黙秘すること)、又は不実の告知(嘘をつくこと)をしたときは、保険者による解除が認められています。
このように、保険者により解除がされた場合、契約者は、既に支払った保険料の返還を受けられないうえ、解除前に保険事故が発生した場合も、保険者から保険金の支払いを受けられないばかりか、既に保険金を受領していた場合は、これを返還しなければならず、重大な不利益を受けることになるため、契約者は、契約をするに際して、告知義務違反にならないよう注意が必要です。
重要な事項とは、保険者がその事実を知っていたならば、当該契約を締結しなかったか、または締結したとしても、より高い保険料を求めた事実をいうとされますが、保険契約には様々な保険商品があり、個々の契約内容によって、重要な事項の具体的な内容は異なるといえます(例えば、生命保険契約においては、既往症、現病、火災保険契約においては、建物の使用用途は重要な事項にあたるといえます。)。
そのため、保険者から告知義務違反による解除がされた場合には、告知義務違反があるのか、解除を妨げる事情はないか等、裁判例を踏まえた吟味、検討が必要となります。