2023-03-06 | 判例・法令等 >
現在日本には、所有者不明土地の面積が、九州以上にあると言われており、社会問題となっています。
所有者不明土地とは、相続等の際に、土地の所有者についての相続登記が行われていない等の理由により、不動産登記簿を確認しても現在の所有者が不明、または所有者が判明していても、その所在が不明で連絡がつかない土地のことをいいます。
所有者不明土地があると、災害が発生した際の復旧、復興事業や、土地の取引が進めにくくなったり、土地が共有となっている場合、全ての共有者の所在が判明していない限り、その土地を売却することが難しくなります。
そこで、所有者不明土地の発生を防止するための方策として、民法等が改正され、そのうち不動産登記法の改正により、相続登記の申請の義務化が2024年4月1日から、氏名・住所の変更登記の申請の義務化が2026年4月までに施行されることになりました。
また、義務化の一方で、土地を手放すための制度として、相続土地国庫帰属法が新たにでき、相続した土地の国庫帰属制度が始まります。
相続土地国庫帰属制度とは、相続等により、望まず取得した土地を国に引き取ってもらい、管理不全を防ぐことを目的とした制度です。
これまでは、財産のうちの一部の不要な土地だけを放棄することはできず、相続放棄により、そもそも最初から相続人ではなかったこととして、預貯金を含む全ての財産を放棄するしかありませんでしたが、この制度を利用することにより、要件(建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がないこと、土壌汚染や埋設物がないこと、危険な崖がないこと、権利関係に争いがないこと、担保権等が設定されていないこと、通路など他人によって使用されていないこと)を満たせば、審査料や負担金は必要ですが、法務大臣の承認を受けて、相続した不要な土地を国に引き取ってもらい、手放すことができるようになります。
これにより、相続に際し、財産の中に不要な土地がある場合でも、これからは相続放棄以外の方法を選択する選択肢もできたといえます。
もっとも、実際の運用や使い勝手としての課題もあるため、実際に国庫帰属制度の利用を検討される際は、専門家にご相談いただくのがいいのではないかと思います。
(事務スタッフ 平尾)