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離婚

養育費の増減額

養育費の金額は、父母の収入・資産・子の人数や年齢等、様々な事情を考慮して決定されるべきものですが、支払期間が相当長期にわたる場合も多く、権利者・義務者の経済状況や子を取り巻く環境が変わる等により、いったん決めた養育費の金額が不相当になってしまう場合もあります。
そのため、養育費を一度決定した場合でも、子の利益のために必要がある場合や事後的な事情変更等が生じた場合には、養育費の増減額を求めることが可能であり、父母の合意又は調停、審判で決定されることにより養育費の金額を変更することができます(民法766条3項、880条)。
調停や審判の実務においては、①合意の前提となっていた客観的事情に変更が生じているか否か②その事情変更を当事者が予見できなかったか否か③事情変更が当事者の責に帰することができない事由により生じたか否か④合意どおりの履行を強制することが著しく公平に反するか否かといった観点から、事情変更による増減額の当否を判断する傾向にあります。
〈よく主張される事情変更事由〉
⑴ 収入の増減
収入は養育費算定の前提となる事情であり、増減の程度にもよりますが、合意時に予期できない収入の変動が生じていれば、事情変更として認められる可能性があります。
もっとも、給与所得者の場合、昇給や時間外手当や期末手当、賞与等の変動が生じ得ることはある程度織り込み済みであることから、これらの変動による収入の変化は事情変更事由として認められにくい傾向にあります。
合意時に予期できない事情変更としては、勤務先会社の倒産や転職による収入(稼働能力を含む)の大幅な変化等が挙げられます。
また、収入の増減については、現実に収入や稼働能力が変化しているか否かが争われることが多いことから、裏付ける資料の有無が重要です。
⑵ 子の成長に伴う進学等
子の成長に伴う進学について、合意時において予期できたか否か、合意時に進学を考慮した金額を算定していたか否かが重要となります。
私立学校への進学や大学進学については、どのような学校に進学するか、不確定要素も多いうえ、進学先によって要する費用に大きな差が出ることも多いため、合意時において、進学を予期し、かつ、当該進学先を前提とした養育費を算定することは難しいと評価される場合が多く、事情変更として認められやすい傾向にあります。
もっとも、上記のように不確定要素が多いことから、養育費の合意を行う際には、子が進学した場合には改めて協議する旨の条項を入れておくのが無難です。
⑶ 再婚
① 義務者の再婚
義務者の扶養する家族の有無、人数は、養育費算定の前提となる事情であり、これらに変化が生じた場合、事情変更として認められる可能性があります。
調停や審判の実務においては、合意時に予期できなかった事情か否か、減額請求が信義則に反しないか否かという観点から判断される傾向にあります。
婚姻するまでにはある程度の交際期間を経ることが通常であることから、養育費の合意後、短期間で再婚した場合には、義務者が合意時点で既に再婚相手と交際し、再婚の可能性を予期できたものとして、義務者の再婚を事情変更と認めない場合もあります。
他方、再婚までの期間が短期間であっても、その後に懐妊して、再婚相手との間に実子が生まれた場合、子の出生は合意時に予期できないと評価されやすく、子の出生を理由とする減額請求が信義に反する特段の事情のない限り、事情変更として認められる可能性が高いと思われます。
② 権利者の再婚
権利者が再婚した場合であっても、再婚によって直ちに再婚相手が、権利者の連れ子を養育すべき法的義務を負うわけではないことから、原則として、事情変更には当たりません。
もっとも、再婚後、再婚相手が権利者の子と養子縁組した場合、養親が第一次的な扶養義務者となり、実親である義務者の養育費分担義務は第二次的なものとなるため、養親が扶養義務を十分履行できないような特段の事情が限り、事情変更として認められる可能性があります。
以上のとおり、合意や調停、審判等で養育費を一度決めた場合であっても、後から養育費の額を変更することが可能な場合がありますので、養育費の金額に疑問を生じた際には、一度、法律の専門家に相談することをお勧めします。

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