経営者保証ガイドラインは、平成25年、中小企業庁・金融庁の関与のもと、経営者保証の取り扱いに関する準則として策定されました。
経営者保証ガイドラインの法的位置付けとしては、法律ではなく、あくまでガイドラインであるため、法的拘束力があるものではありませんが、一方で、上記のとおり、中小企業庁・金融庁の関与のもと、中小企業団体及び金融機関団体の関係者が、中立公平な学識経験者、専門家等と共に協議を重ねて策定したものであって、対象債権者によって自発的に尊重され遵守されることが期待されています。
経営者保証ガイドラインは、保証契約時等の対応(入口面)と保証債務の整理時の対応(出口面)に大きく分かれ、特に後者は、経営者個人が破産手続きを経ることなく破産手続きの場合を超える財産を残す可能性があり、破産者となることも回避できるツールとなるものです。
経営者保証ガイドラインの適用要件としては、保証人が個人であり主たる債務者である中小企業の経営者であること、主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等について適時適切に開示していること等の要件や、対象債権者はあくまで中小企業に対する金融債権を有する金融機関等であること等といった要件がありますが、保証人が一定の要件を充足する場合に、残存資産を認めることにより、保証人に早期の事業再生等を決断させるインセンティブを与えており、その結果、主債務者となる会社が対象債権者に提供する弁済原資が増加するのであれば、当該保証人は結果として対象債権者の回収額の増加に貢献したこととなり、対象債権者にとっての経済合理性が認められることとされています。
インセンティブ資産の範囲は、破産法上自由財産とされている財産に加え、一定期間の生計費に相当する現預金(1カ月あたりの生計費を33万円とし、保証人の年齢に応じた期間を目安として算出します)、華美でない自宅等が対象とされており、対象債権者は、保証人からこれらを残存資産に含めることの必要性の説明を受けた場合には、当該資産を残存資産に含めることについて、真摯かつ柔軟に検討することとされています。
経営者保証ガイドラインについては、中小企業や地域金融機関においては、まだまだ周知、浸透されているとは言い難く、弁護士の間でも実際に経営者保証ガイドラインに基づく保証債務の整理手続きを理解し、実践している専門家の数は少ないようですが、当事務所は、会社の倒産手続きと合わせて、適用可能なケースについては経営者個人の保証債務を経営者保証ガイドラインに基づき整理することについても提言させていただいております。