破産者が行った既存の債務についての担保の供与又は弁済等の債務の消滅に関する行為のうち、支払不能となった後又は破産手続開始の申立てがあった後にされたもの(破産法第162条1項1号)や、破産者が支払い不能となる30日前以内にされた、破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払い不能になる前30日以内にされたもの(同項第2号)については、偏頗行為として否認権行使の対象となり、否認権が行使された場合、これらの行為により流出した財産は破産財団に復することとなります(破産法167条1項)。
また、偏頗行為は否認権行使の対象となり得るだけでなく、免責不許可事由に該当する可能性がありますが、免責不許可という重大な効果を生じさせることから、免責不許可事由に該当する場合は否認権行使の対象となる場合よりも限定されています。
具体的には、破産者が、特定の債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをした場合に、免責不許可事由が認められることとなります(同法252条1項3号)
もっとも、形式的に免責不許可事由に該当する場合であっても、免責制度が個人の経済的再生を図るために破産者を債務から解放する制度であることから、裁量免責の可否が検討され、具体的には、破産者が債務を負った事情、免責不許可事由の性質、重大性、帰責性、破産債権者の態度や意見、破産者の経済的更生に向けた努力や意欲、破産手続きへの協力の有無や程度などの事情を総合的に考慮し、裁量免責が認められる場合があります(同条2項)。
上記の免責不許可事由の該当性や、裁量免責の可否については、法的知見から、個別具体的な考慮して判断されるものであるため、破産手続きを検討されている場合には、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。