⑴ 銀行
事業譲渡で買収するための資金面を手当するのが銀行ですが、銀行が仲介業
者のような働きでマッチングに動くこともあります。
中小企業の社長から、M&Aに際して、銀行が専門家として間に入ってくれ
ているから大丈夫、という声を聞くことがありますが、銀行の立場として中
立とはなりえないこと、そもそも金融以外の法務や税務等の面で銀行は専門
家ではないこと、銀行としてはM&Aが成立してこそ、貸付が実行できる
し、マッチング業務を行う場合は手数料収入も入るという面もあるので、特
に、ネガティブ情報、リスク判断について、銀行が間に入っているから大丈
夫というのは大きな勘違いです。
⑵ 仲介業者
仲介は 不動産の仲介がイメージしやすいかもしれませんが、売主、買主双
方の仲介が同じM&Aの仲介業者1社で行われる場合は注意が必要です。仲
介業者が売主、買主、どちらの肩を持っているのか分からないからです。
こちらだけの仲介業者なのか、双方の仲介業者なのかはきちんと確認したう
えで、仲介契約を締結するようにしましょう。双方の仲介業者の場合、決し
て御社の立場に立って契約書の全条項を作ってくれている、交渉してくれて
いるとは限りません。
ただ、現実問題として、中小規模のM&Aで、買い手と売り手にそれぞれ別
の仲介業者、エージェントがついていることは少ないようにも思われますの
で、仲介業者との付き合い方、仲介業者の言動、アドバイスの検討にあたっ
て注意を払い、買主側は買主側、売主側は売主側で、それぞれ別個に法務や
税務等のアドバイザーをつけて対応するようにしなければいけない、という
のが現実的な対応になるかと思います。
⑶ 弁護士
弁護士は秘密保持契約、基本契約書、最終契約書といった契約書面を作成し
ます。
また、株式譲渡がいいのか、事業譲渡がいいのかといったスキーム決定の助
言についても、会社法の規制や手続き、デューデリジェンスによる問題点を
踏まえた検討になるので、主としては弁護士の分野になろうかと思います。
但し、スキームによって、課税額、課税対象等が変わるため、税理士、会計
士のアドバイスも受けながら、スキームを決める必要があります。
法務的にアドバイスする内容は、それこそ売り手、買い手の立場で180度
異なりますので、それぞれの立場で法務アドバイザーが必要となるもので
す。
⑷ 公認会計士・税理士
公認会計士・税理士は財務デューデリジェンスを担当しますし、売主側であ
れば、M&Aの対価支払い後の課税額やその税務対策のプランニングをして
もらうことになるでしょう。
また、企業価値の算定にあたっての助言を行うのも、公認会計士、税理士で
すが、あくまでもこれは一つの目安、決算書等の数字をもとにした算出方法
であり、本来、金額は画一的、数学的に決めなければいけないものではあり
ませんので、一つの参考にしていただきつつ、売主としては幾らであれば売
却を許容するのか、買主としては、どれだけ当該企業が欲しいのか、買収に
よる相乗効果も見積り、調達可能な資金額も検討しながら、買収額を決める
ことになります。