法人のお客様
HOME  >  法人のお客様  >  事業譲渡、事業承継  >  遺留分に関する民法の特例

遺留分に関する民法の特例

 親族内承継においては、先代経営者に複数の相続人がいる場合、何らの準備もしていなければ、相続によって先代経営者が保有していた自社株や事業資産が分散してしまい、後継者の経営基盤を危うくするばかりか、遺産分割の間の経営の不安定化、株主管理コストの上昇、株式買い取り請求による会社資金の流出という事態が生じる可能性があります。
 これに対する事前の対策として、自社株等を生前贈与や遺言などにより後継者に対して集中して承継させることが考えられるものの、これらが特別受益に該当し、後継者以外の相続人(遺留分権利者)の遺留分を侵害する場合には遺留分減殺請求権が行使され、遺留分相当額の支払いを余儀なくされる可能性があります。
 また、生前贈与された自社株等が特別受益として遺留分算定の基礎財産に算入される場合、その価額は贈与時ではなく相続開始時のものであり、その価額が増大した場合の受贈者(後継者)の寄与、貢献は考慮されないため、贈与を受けた後継者の努力や才覚により自社株の評価が上昇した場合、かえって他の相続人の遺留分を増大させるというジレンマが生じ、後継者の経営意欲を削ぎかねません。
 そこで、経営承継円滑化法の遺留分に関する民法の特例として(「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」第3条から第11条)、代表者となっている後継者及び先代経営者の推定相続人全員を含めた合意の上で、中小企業者であり、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場企業である対象会社については、先代経営者から後継者に贈与等された自社株式の価額についての除外合意(遺留分を算定するための財産の価額から除外する合意)、固定合意(遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を合意時の時価に固定する合意)またはその両方を行い、上記の遺留分に関する問題に対応することができます。
 また、個人事業主については、①合意又は贈与の時点までに3年以上事業を営んでいたこと、②承継する事業に係る「事業用資産」を全て贈与したこと、という要件を満たす先代経営者から、後継者(合意時点で個人事業主である必要があります。)に贈与等された事業用資産の価額について除外合意ができることが定められています。
 当該手続きは、合意内容の定め方について専門的な知識が必要である他、効力を生じさせる要件として経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可などの手続きが必要となります。
 また、中小企業の事業承継にあたっては、上記の遺留分に関する問題以外にも様々な問題があり、事業承継当時に対処していれば予防できたにもかかわらず、これを怠った結果、後になって大きな問題となることも少なくありません。
 将来における紛争を予防するためにも、事業承継を検討されている場合には、一度、弁護士に相談することをお勧めいたします。

以上

事業譲渡、事業承継に関連する情報

ページトップへ