M&Aでは、機密性の高い情報を相互に開示することが予定されており、特に、売主側の経営情報は詳細かつ広範に開示されることになります。
そして、秘密保持契約を締結しないままM&Aを進めてしまった場合、秘密保持義務のないまま経営情報が流用されたり、漏洩されるリスクがあります。
また、情報管理が甘くなった結果、自社の社員が不用意にM&Aのことを知るところとなり、不安を煽る結果となったり、他者の介入により無用の混乱を招くことがあっては、円滑なM&Aに支障を来す事態が生じることも考えられます。
そのため、M&Aの交渉を始めるにあたっては、初期の段階で秘密保持契約を締結しておく必要があります。
契約書の文言については、秘密情報の定義をどうするか、狭く限定的に定義づけしたうえできっちりと管理するか、広く網をかけて網羅的に情報統制を図るか、情報開示をどの範囲の役職者にまで認めるか等といったことについては、売主、買主、どちらの立場かによって変わるもので、各社の情報管理能力、M&Aの内容、周辺環境等によっても変わりうるものです。
そのため、安易に秘密保持契約のひな型を個別事案に応じた検討をせずにそのまま流用したり、交渉の相手方に契約書の作成を一任することは、後になってから不都合が生じるリスクがありますので、ご注意いただく必要があるものです。