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一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人

一般社団法人、一般財団法人(以下、一般社団法人と一般財団法人を合わせて「一般社団法人等」といいます。)は、営利を目的としない法人であり「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下「一般法人法」といいます。)に基づいて設立される法人です。

一般社団法人等には、株式会社と異なり株式という持分の概念はなく、株式譲渡に相当する出資持分譲渡による事業承継は存在しませんので、事業承継の方法としては、法人の業務執行を行う理事の交代、理事の選任を行う社員、評議員の交代、合併や事業譲渡により行う方法が考えられます。

1.理事の交代による事業承継について
一般社団法人、一般財団法人のうち、行政庁から公益性を認められ、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益法人認定法」といいます。)により公益性を認められた法人(公益法人)においては、その公益性を図るため同族会社のような経営とならないように、理事及び配偶者または三親等内の親族等(内縁関係にある者、家事使用人や運転手等、その他生計を養っている者、それらの配偶者を含む。)が理事の総数の3分の1を超えて含まれてはならないこと(同法律第5条10号)、他の同一の団体の理事または使用人である者等が理事の総数の3分の1を超えて含まれてはならないこと(同条11号)が公益性の認定の基準とされています(但し、公益法人又はこれに準ずるものとして政令で定めるものについては、その団体の役員らにも公益性を保持するための制限がかかっているため、上記の「他の同一の団体」から除かれています。)。

したがって、公益法人において、理事の変更による事業承継を行う場合、上記制限を超えて親族等を理事に選任することはできないことに注意する必要があります。

2.合併による事業承継
かつては、民法上の公益法人が合併するという制度はありませんでしたが、法人の承継手段としての合併の必要性は、一般法人でも公益法人でも営利法人でも変わるところはないこと等から、平成20年の公益法人制度改革により一般社団法人等に対する合併制度が新設されることになりました(一般法人法第242条乃至260条)。

同法第242条前段において、「一般社団法人又は一般財団法人は、他の一般社団法人又は一般財団法人と合併することができる。」とされているため、一般社団法人が株式会社やNPO法人と合併するなど、同条に規定する以外の合併をすることはできません。

また、一般法人法には、組織変更の規定がないことから、例えば一般社団法人から一般財団法人への組織変更は認められておらず、合併する法人が一般社団法人のみであれば、吸収合併後の存続法人(新設合併における新設法人)も一般社団法人でなければならないとされています(同法243条1項1号)。

一方で、一般社団法人と一般財団法人の合併の場合には、存続法人、新設法人はどちらの種類を選択してもよいということになりますが、一般社団法人には、一般財団法人にはない基金制度(一般社団法人の活動の原資となるもので、基金の拠出者に対し返還義務を負ういわば外部負債です。)があり、存続法人又は新設法人が一般財団法人である場合、基金の返済義務を承継できないため、合併契約時までに基金の返還が終わっていない場合には、基金の拠出者を保護するため、存続法人、新設法人は一般社団法人に限定されます(一般法人法第243条第2項)。

また、公益法人が合併を行う場合、公益目的取得財産残額(公益目的事業に関して得た財産で、公益目的事業のために使用、処分しなければならないとの制約の下に保有が許されています。)の処理が問題となります。

公益事業目的事業財産は公益目的のために使用、処分するとの性質があるため、保有主体たる公益法人が消滅する場合には、毎事業年度末における公益目的事業財産の未使用残高(公益目的取得財産残額)を合併の日から1ヶ月以内に類似の事業を目的とする他の公益法人もしくは独立行政法人等のうち、定款で定める者に贈与しなければならないとされています(公益法人認定法第5条17号。公益目的取得財産残額贈与義務)。

公益法人が消滅法人であり、一般社団法人・一般財団法人が存続法人となる場合、公益目的取得財産残額を承継することはできないため、存続法人は、公益法人たる吸収合併消滅法人の上記義務を承継することになります。

一方で、吸収合併消滅法人、吸収合併存続法人がいずれも公益法人である場合で、吸収合併存続法人が公益法人となり、吸収合併存続法人が類似の事業を目的とする場合や、新設合併において、新設合併設立法人が公益法人の地位を承継することについて行政庁の認可(同法第25条)を受けた場合には、公益目的取得財産残額を承継することができます。

また、公益法人が合併をする際には、吸収合併の際の、同法第11条第1項所定の事項(主たる事務所の所在場所等)の変更に関する事前及び事後の行政庁からの認定(同法施行規則第7条。上記事項に変更がない場合には、同法第24条1項1号に規定される届け出が必要です。)、新設合併の際の新設合併設立法人が公益法人の地位を承継することの認可等の手続きをとる必要があります。

3.事業譲渡について
公益法人においては公益法人の設立後においても行政庁が公益法人の活動を適切に監督していくために、事業譲渡の際、公益に関わる基本的事項については、変更を行った場合、設立時と同様の行政庁による変更の認定を受ける必要があります(同法第11条)。

また、公益法人において、事業の全部または一部の譲渡を行う場合は、事業譲渡契約書の写しおよび理事会の議事録の写しを添付して、あらかじめその旨を行政庁に届けでなければならないとされているため(同法第24条1項2号、同法施行規則第41条2項2号)、認定を受けるべき変更に当たらない場合でも、事業の全部または一部の譲渡を行う場合は、変更前の届け出が必要となります。

以上

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