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違約金条項

1 違約金条項の機能

契約当事者の一方に債務不履行があった場合、その相手方は、当該債務が履行されていれば得られた金銭の給付等の経済的利益を得られないばかりか、有形・無形の損害を被る可能性があります。

このような場合、当該損害を回復するためには、原則として損害を被った側が損害の発生、損害額の立証をしたうえで相手方に損害賠償を請求しなければなりませんが、損害の発生、額を立証することが困難であることは少なくありません。

そこで、損害の発生、額の立証責任を軽減し、迅速な権利救済を実現するために、契約書に違約金条項を定めることが有用です。

逆に、責任を限定する方向で契約書を作成する場合には、損害賠償責任の帰責事由を故意、重過失(軽過失を免責)に限定したり、損害賠償の範囲について特別損害や逸失利益を除外したり、上限金額を定める等して、損害賠償義務を制限し、リスクを抑えることが考えられます。

2 違約金条項の法的性質

違約金条項といっても、その法的性質は様々ですが、概ね、損害賠償額の予定と、違約罰に大別されます(なお、民法420条3項は、当事者の意思が明らかでない場合、違約金は賠償額の予定と推定するとしています。)。

損害賠償額の予定は、債務不履行によって生じる損害に対して、予め当事者がその賠償額を約定するものであり、法的効果としては、債務不履行があったときに、債権者は予定賠償額を請求できます。

違約罰は、債務の履行を怠った者に対する制裁として定められ、実損については別途損害額の立証の上で賠償を請求したり、違約金を超える実損の部分の賠償を請求しうる点で損害賠償額の予定と区別されます。

ただし、契約の文言で違約金の他に損害賠償を請求しうる旨が定められていても、それだけでは当然に違約罰とは解されない場合もありますし、損害賠償額の予定と言っても、損害賠償額の最低額だけを決め、実損害が超過すれば超過分の請求を妨げない趣旨と解釈される場合もあるため、違約金条項を定める場合には、法的性質の解釈で争いが生じないよう趣旨を明確にしておく必要があります。

3 違約金条項の制限

また、違約金条項については、以下のように制限がされる場合があるため、事実の類型に応じてこれらの制限を考慮して定める必要があります。

(1)公序良俗違反等による制限

改正前民法420条第1項後段は、契約当事者が約定した予定賠償額を裁判所は増減することが出来ないとしていましたが、実務上、約定額が損害に比して著しく過大な場合などには、公序良俗違反等を理由に予定賠償額を一部無効とするなどして、事実上の減額がある程度認められています(なお、民法改正により、かかる実務上の取り扱いに従う形で、同項後段は削除されました。)。

(2)宅地建物取引業法による制限

売買契約の売主が宅建業者であるときには、宅建業法により、債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えることとなる定めをしてはならない、と定められており(宅建業法38条1項)、この規定に反する特約は、代金の額の10分の2を超える部分について、無効となります(同条2項)。

(3)消費者契約法による制限

契約が消費者契約に該当する場合には、消費者契約法により、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについて、その超える部分が無効となると定められています(同法9条1号)。

また、当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14・6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるものについて、その超える部分が無効とされています。

さらに、消費者契約法には、消費者の利益を一方的に害する条項が無効とされる旨も規定されており(同法10条)、違約金条項が同条に該当するとして無効となる可能性があります。

4 結語

上記のとおり、違約金条項は、迅速な権利救済を実現する機能がある他、相手方に契約の履行を促し、契約の拘束力を強め、紛争を防止する機能もある重要な条項ですので、契約書を作成するにあたっては、ケースに応じて、同条項を定めることをご検討すべきと思われます。

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