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保証債務(民法改正)

保証債務については、民法改正により多くの変更が行われているところ、
従前の判例法理を条文上明記した部分や細かな法的構成の変更だけでなく、
個人保証人保護のための創設的規定も多く見られるところです。

民法458条の2の創設により、受託保証人から請求があった場合に、
債権者は、主債務者による債務の履行状況に関する情報提供義務を負うこと
になりました。

また、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、利息が遅延損害金となり、
%が変更するわけですが、保証人がそれを知らないと予想もしないような金
額になり、その期間が長くなると損害額も大きくなり、問題があったため、
個人保証人を保護の観点から、民法458条の3は、債権者に、期限の利益
を喪失した場合の個人保証人への情報提供義務を負わせ、期限の利益喪失を
知った時から2か月以内に情報提供を行うことが必要となり、これを怠った
場合は未通知期間の遅延損害金を保証人に請求することができなくなりまし
た。但し、同条項は個人保証人保護のための規定であるため、保証人が法人
である場合には適用されません。

民法463条1項は、受託保証人の主たる債務者に対する事前通知義務を定
めており、保証債務の支払い前に主たる債務者へ事前通知を怠った場合、主
たる債務者に相殺等の抗弁事由があったときには、それを対抗されてしまう
ことになります。そのほかにも、主たる債務者の受託保証人に対する通知義
務等についても規定がありますが、いずれも任意規定なので、煩雑であれば
特約で排除しておくことは可能となりますので、契約書作成時に注意が必要
です。

根保証契約については特に注意が必要で、平成16年の民法改正で貸金等債
務の根保証について極度額の定めと元本確定事由が規定されていましたが、
民法465条の2の改正により、これが貸金等債務だけではなく、一般の根
保証にも適用されるようになり、例えば、賃貸借契約の保証債務についても、
極度額を規定していないものは無効となるため、賃貸事業者としては契約書
のひな型の変更、見直しが必要となります。

さらに、民法465条の6は、①事業のために負担した貸金等債務を主たる
債務とする保証契約又は②主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等
債務が含まれる根保証契約については、保証契約をする1ヶ月前までに公正
証書で保証の履行意思の確認を行っておかなければ効力が生じないこととさ
れました。

但し、民法465条の9により、保証人となる者が主たる債務者の理事、取
締役、執行役又はこれらに準ずる者(いわゆる「経営者」)又は支配株主、
共同経営者、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者の場合に
は、公正証書作成義務は除外されています。

公正証書作成義務がない場合のわかりやすいイメージとしては、住宅ローン
は入りませんし、賃貸借契約の連帯保証人も対象外となります。

また、民法465条の10は、事業のために負担する債務を主たる債務とす
る個人保証や主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保
証を委託するとき、情報提供義務として、主たる債務者において、「財産及
び収支の状況」「主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及
び履行状況」「主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとする
ものがあるときは、その旨及びその内容」を保証人に説明しなくてはならず、
「主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を
提供したため委託を受けた者がその事項について誤認したことにより」保証
契約が締結され、「主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事
実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたとき」
保証人は、保証契約を取り消すことができるとし、個人保証人の保護規定が
強化されることとになりました。

なお、保証債務の改正については、付則の21条1項に「施行日前に締結さ
れた保証契約は改正前の民法による」とされていますが、例えば、賃貸借契
約においては、更新なのかあらたな締結なのかが問題となるケースがあると
思われますので、経過措置や実情も踏まえつつ、契約書の条項変更も含む対
応について検討する必要があると思われます。

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