労働者や会社の業績を評価し、この評価に基づいて、労働者の賃金を減額改定するためには、労働契約上の根拠が必要であり、労働者と個別合意をするか、就業規則上、賃金の改定が予定されていなければなりません。
労働契約書や就業規則において、使用者が賃金を一方的に改定できることができる条項が定められている場合であっても、改定の基準・下限などが全くなく、使用者の恣意により賃金を改定することを許すような条項であればその条項自体が合理性を欠き無効となることがありますし、就業規則等において査定手続きが定められているにもかかわらずこれに違反してなされた賃金改定については労働契約上の根拠を欠くものとして無効となる場合がありますので、賃金改定の基準等、書面上、規定の内容をしっかりと吟味し作成しておく必要がありますし、制度の運用、人事評価が恣意的であると言われないよう、適正に運用し、外部にもその人事評価内容をしっかりと説明することができるようにしておくことが望まれるものといえます。
会社が好調で業績が上がり続け、労働者の生産性や能力も上がり続ければよいのでしょうが、実情としてはそうではないケースがあるのも当然で、そのような場合、一足飛びに解雇等のリスクのある対応をとるのではなく、賃金改定による緩やかな対応をとる等、労務管理上の戦略、選択肢を増やし、経営者として会社を守ることができるよう、事前に対策を講じる戦略的労務管理をされることをお勧めいたします。