事業者の法令違反行為を労働者が通報した場合、当該労働者が解雇等の不利益な取り扱いを受けないよう保護し、事業者の法令遵守を強化するため、平成18年4月、公益通報者保護法が施行されました。
同法は、使用者の不利益処分から保護されるべき告発の外縁を画するものではなく、明らかに保護されるべき内部告発の枠組みを確認したものにとどまりますので、同法の要件を満たさない告発が全て違法となるわけではなく、個別に違法性の有無を検討する必要がありますので、注意が必要です。
まず、公益通報者保護法により、社内通報については、保護要件が最も緩和されており、①不正の目的でない、②法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていると思った、③通報先が労務提供先、又は労務提供先があらかじめ定めた者の3点で、通報事実の真実性、真実相当性は要件とされていません。通報対象となる法令違反行為は、公益通報者保護法及び政令に定められている法律違反行為であり、罰則があること、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を直接の目的とすることなどが要件とされています。
行政通報については、社外への通報であるため保護要件が少し厳しくなり、①不正の目的でない、②法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていると信じたことに相当の理由がある(真実相当性)、③通報先が処分又は勧告等をする権限を有する行政機関の3点とされています。
社外通報については、保護要件が厳しく、①不正の目的でない、②法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていると信じたことに相当の理由がある、③社内や行政通報以外の通報を必要としている、④通報先は「被害の拡大等を防止するために必要であると認められる者」の4点が必要とされています。特に、③は「社外通報の相当性」と称され、具体的に、社内や行政通報では不利益を受けるおそれがあると信じるに足りる相当な理由がある、社内通報では証拠隠滅等のおそれがあると信じるに足りる相当な理由がある、労務提供先から社内、行政通報をしないことを正当な理由なく要求された、社内通報したが20日経過しても調査開始の連絡がなく、または正当な理由なく調査が開始されない、個人の生命、身体に危険が発生し、又は発生の危険が迫っていると信じるに足りる相当な理由がある、のいずれかを必要としていますので、注意が必要です。