外国人労働者についても、労働契約法、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの労働保護法規は、日本国内における強行的な法秩序として、在留資格の点で適法な就労か違法な就労かを問わず適用されます(労働基準法3条には、外国人について均等待遇原則が明記されています)。
外国人労働者を雇用する際には、日本人労働者を雇用する場合と同様に、雇用契約書、労働条件通知書等の書面を交付する必要があるだけでなく、後日のトラブルを防ぐため、当該書面に雇用する労働者の母国語により翻訳した書面を添付する等、契約内容の不知や誤解を避ける手立てを講じる必要や、滞在期間を確認し、当該期間を踏まえて有期雇用契約を締結する、英文就業規則を作成する、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者雇用労務責任者を選任する(「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」において努力義務とされています。)等、種々の配慮すべき点があり、注意が必要です。
また、労災保険、雇用保険、国民年金、厚生年金等についても、一部を除き、原則として外国人労働者に適用があります。
外国人労働者との労働契約に際し、労働条件が入管手続上の書類に記載された労働条件と、当事者が実際に合意した労働条件と異なるとして争いとなる場合がありますが、この点については、裁判例上、両者は別の問題であるとして、労働条件は当事者の合意内容によって決定されるものとされています(山口製糖事件 東京地方裁判所平成4年7月7日判決)。
また、外国人労働者の労働災害については、日本人と同様、企業に安全配慮義務違反が認められる場合には、企業が外国人労働者に対し損害賠償義務を負うこととなりますが、逸失利益の算定については、日本における就労可能期間をどのように定めるかが問題となります。
この点、短期滞在の在留資格でわが国に入国し、在留期間経過後も不法に残留して就労していた外国人について、労災事故により後遺障害を残す負傷をし、事故後も国内に残留し事故の20日後から約5か月後までの間は製本会社で就労するなどして収入を得ているが、最終的には退去強制の対象とならざるをえず、特別に在留が合法化され退去強制を免れうるなどの事情が認められない場合には、上記外国人の逸失利益の算定に当たり、わが国における就労可能期間を同人が事故後に勤めた製本会社を退社した日の翌日から3年間を超えるものとは認められないものとした判例があります(改進社事件 最高裁判所平成9年1月28日判決)。