有期労働においては、契約期間の満了時に契約が反復更新されて長期間雇用される実態として、無期雇用に近い状態となっていたにもかかわらず、契約が更新されず雇止めされる場合もあるところ、雇止め法理により、一定の場合に雇止めが無効となる規制が確立されるなか、平成24年8月成立の労働契約法の一部を改正する法律により、有期雇用の無期転換ルール(労働契約法18条)が設けられました。
労働契約法18条は、同一の使用者との間で締結された2以上の契約期間を通算した期間(「通算契約期間」といいます。)が5年を超える有期契約労働者が、使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、無期労働契約の締結の申込み(無期転換申込権の行使)をしたときは、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する翌日から労務提供する無期労働契約が成立することを規定しています(なお、施行日である平成25年4月1日以後を契約期間の初日とする有期労働契約について適用されます。)。
無期雇用への転換については、就業規則上の整備を何もしていない場合には、無期転換後の労働条件は期間の定めを除く有期労働契約中の労働条件がそのまま引き継がれることになりますが、労働条件が据え置きであれば、労働者の不満や労働意欲の低下等の問題が発生するうえ、職務の内容を有期労働契約当時と同一にしたまま、無期転換労働者の賃金のみを引き上げるなら、無期転換されていない有期契約労働者から不合理な差別の禁止原則(労働契約法20条)違反を指摘されるおそれもあります。
他方、無期雇用への転換を防ぐために、無期転換申込権の発生前に契約を終了すること(雇止め、不更新条項の記載等)も考えられますが、雇止めが無効となる法的リスクもあるため、安易な雇止めは禁物で、慎重に有効性を吟味してから行うべきです。
そのため、企業においては、無期転換を受け入れる場合には、無期転換後の労働者の職務内容、人材活用の仕組み、運用等を見直し、就業規則に制度化することが望ましく、有期雇用制度を維持するため雇止めを行う場合に、法的トラブルを避けるためにも弁護士に事前に相談されることをお勧めいたします。