高齢者等の雇用の安定等に関する法律(いわゆる、高齢者雇用安定法)によると、定年は60歳を下回ることができず(同法8条)、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、その雇用する高齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、①当該定年の引上げ、②継続的雇用制度(例えば、定年退職後、再び雇用する再雇用制度)の導入、③当該定年の廃止のいずれか(「高齢者雇用確保措置」といいます。)を講じなければならないと規定しており(同法9条)、これに違反した場合、厚生労働大臣の助言、指導、勧告の対象となり、さらに勧告に従わなかった場合は、その旨公表されることになります(同法10条)。
そして、高齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針によると、心身の故障のため業務に耐えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には継続雇用しないことができるとされており、継続雇用しない場合が限定されています。
継続雇用制度を導入する場合、継続雇用後の労働条件については、最低賃金法等の雇用に関するルールの範囲内で、労働時間、賃金、待遇などを新たに契約することが可能とも考えられますが、無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であるとして、労働契約法20条に違反し、違法と評価される可能性も考えられます。
これについて、長澤運輸事件・最高裁平成30年6月1日判決は、職務内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が正社員(無期契約労働者)と同一の嘱託社員(定年後、嘱託社員として再雇用された社員)の賃金減額について、定年後再雇用されているという事情が労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されるとしたうえで、賃金項目の趣旨を個別に検討し、精勤手当が、従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給されるものであり、職務内容が同一である正社員と嘱託社員との間で皆勤を奨励する必要性に相違がないとして、精勤手当を嘱託社員に支給しないことが不合理であること、時間外手当についても、不合理である精勤手当の労働条件の相違を計算の基礎に含むもので不合理であること等を理由に、会社の不法行為責任を認めています(精勤手当等の支給を受けることのできる労働契約上の地位にあることは否定するものの、これと同額を不法行為責任に基づく賠償金として認めています。)。
そのため、後々、再雇用者との間でトラブルにならないよう、継続雇用後の労働条件を含めた制度設計については、このような判例や労働契約法を吟味、検討したうえで作る必要があり、弁護士に事前に相談されることをお勧めいたします。