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競業避止義務

労働者は、労働契約中、その付随的義務として、会社の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務があります。そのため、そのような行為がなされた場合には、就業規則の規定に従って当該労働者を懲戒処分することや、当該労働者に対して、損害賠償請求することが考えられます。

他方、退職後は、雇用契約自体が終了しているため、原則として、同契約の付随義務としての競業避止義務は発生しないことから、退職者に競業避止義務を課すには、個別に競業避止契約を締結することが有効となります。

退職後の競業避止契約については、退職者に競業避止義務を負わせることで確保しようとする企業の正当な利益の具体的内容等との関係で、競業避止義務を課す従業員の在職中の地位、競業避止義務を負わせる期間、地理的範囲等が合理的になっているか否か、代償措置の有無、程度等を検討する必要があり、仮に、企業秘密とは無関係の事務所の従業員に競業避止義務を負わせたり、期間が不当に長期にわたる等、退職者の職業選択の自由を過度に制約する場合、公序良俗違反により無効と判断される可能性があるため注意が必要です(なお、期間については、ケースバイケースですが、2年を超えると長いと評価される傾向にあります。)。

また、競業避止義務に違反した者に対して、退職金を減額、支給しない扱いとすることについては、前提として、退職金規程にその旨の明確な規程が存在することが必要で、その規程の必要性、退職従業員の退職に至る経緯、退職の目的、退職従業員が競業関係に立つ業務に従事したことによって会社の被った損害などの諸般の事情を考慮して有効性が判断されますが、退職金が、在職中の功労や功績への対価だけでなく賃金の後払いの性質を有するものであることから、全額不支給が肯定されるハードルは極めて高いといえます(なお、半額不支給を肯定したものとして、三晃社事件・最高裁昭和52年8月9日判決、全額不支給を否定したものとして、中部日本公告社事件・名古屋高裁平成2年8月31日判決があります。)。

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